裁量でトレードするために欠かせない道具となるのがチャートです。これから本格的にトレードを始めようという人のなかには、チャートに対してアレルギーがある方もいるかもしれません。しかし、チャートは非常に優れた、トレードに不可欠の道具です。皆さんによく聞かれるポイントとして、「チャートは何を見るべきか」という質問があります。チャートには、すでに紹介したラインチャート、 一般によく使われるローソク足チャート、それに欧米ではポピュラーなバーチャートというものもあります。バーチャートには終値と高値・安値の3つの価格で作成するものと、それに始値を加えたものもありますが、いずれもローソク足でいうところの陰線・陽線の概念がなくひとつの色で描かれるため、日本ではあまり使っている人はいないようです。また平均足(コマ足)やカギ足といったチャートもあります。
それらのなかで、私が皆さんにおすすめしたいのは、やはりラインチャートとローソク足チャートになります。ラインチャートの効用については第4章の最後でお伝えしたとおりです。情報量が極端に限られているため、時間がないときなどにぱっと見てトレンドを把握しやすいという点がメリットです。ラインチャートだけでも充分トレードは可能なのですが、本格的に分析するにはやはりローソク足チャートが欠かせません。情報量が豊富であり、また陰線・陽線が色分けされるため視覚的に把握しやすいというメリットには捨てがたいものがあります。また「酒田五法」など、日本に古くから伝わるローソク足の分析法の人気には根強いものがあるようです。
もうひとつ、チャートを選択する際のポイントになるのが、「どんな周期のチャートを見るのか」ということです。ネット証券各社のチャート分析ツールが充実してきたため、最近ではデイトレードどころか数分、極端な場合には数秒でエントリーから決済までを行なってしまうような投資家も増えてきました。こうした極端に短い時間で決済まで終えてしまうような取引は「スキャルピング」と呼ばれています。
スキャルピングを行なっている人たちのなかには、「週足なんてまず見ることはない」「月足なんて意味はない」といった考え方もあるようです。彼らにとっては目先の、ほんのわずかな値動きだけが重要で、長いトレンドなど、何の腹の足しにもならないものなのでしょう。ですが、cFDは大きなレバレッジをかけることができる取引ですから、諸刃の剣であるレバレッジが負の方向に働いてしまったときの傷は深いものがあります。CFDでレバレッジを効かせた取引をするのであれば、たとえ短いスパンでのトレードであっても、月足や週足を見て必ずメイントレンドはおさえておきましょう。日本のことわざにも「木を見て森を見ず」というものがあります。トレードにおいても、数秒先のことだけに目を奪われて、待ち受けているかもしれない大きな危険に目が向かなくなってしまうようなことは避けなければなりません。