上田コウヘイさん38歳、関西の有名大学を卒業し、一流企業に就職。入社2ヶ月後に同い年の同僚と付き合い始めました。社内でも人気の美人だったと言います。2年半後に妊娠。未熟だった二人は戸惑い、一度は子供を諦めようとしたそうです。しかし車で病院に向かっている時に彼女が泣き始めました。 やっぱり殺せない。 二人はしばらくして結婚を決意します。
披露宴の会場は白金台。芸能人も式を挙げたことのある、豪華な結婚式場でした。幸せな1日だった言います。終わった後も、1週間は式の写真や映像を二人で何度も見返しました。二人目の子供にも恵まれ、33歳で家を購入。しかし、夫婦の距離は離れて行きました。大きな理由があったわけではありません。夫は家事を手伝わないお金使いが荒い。妻は言葉がきつい自分を尊重してくれない。小さな不満が少しずつ積もり、いつのまにか会話もなくなってしまったのです。
週末家族四人でいても、二人は子供を介してしか話をしない。そんな状態が何年も続きました。上田さんは会社の後輩と浮気をしてしまいます。ばれました。子どものことを考え、離婚には至りませんでしたが、関係はさらに冷え込みます。会話のない家庭に耐えられなくなりきり、上田さんの気持ちも完全に切れてしまいました。週に何度も愛人の家に行き、朝帰りを重ねます。朝帰りした日は、必ずチェーンロックがかかっていたそうです。家に入れないのでインターホンを押す。すると、二階から妻が下りてきて、ドアの向こうでロックが外れる音が聞こえる。 二人は一言も交わさず、妻は寝室に戻り、上田さんは家に入る。そんな生活を1年続けたといいます。別れを切り出したのは上田さんでした。去年の8月に別居を始め、今年の3月には離婚。娘は小学3年生、息子が幼稚園の年中。娘だけには話すことにしました。
「パパとママ仲わるいでしょ?離れ離れで暮らしたら、仲よくなるかもしれないから。」
娘は泣きました。ずいぶん前から気づいていたといいます。
「パパとママは、ずっと パパとママだから大丈夫。会いたい時にはいつでも会えるよ。」
何の慰めにもならない言葉をかけながら、上田さんの妻は娘と一緒に泣いていました。二人の子どもは妻と一緒に家に残り上、田さんは家を出ます。結婚10年目のことでした。
離婚して9か月。上田さんは娘から連絡が来た時は、前の自宅に会いに行きます。上がってご飯を食べることもあります。妻とも会話ができるようになってきました。しかし、今年幼稚園の年長になった息子には、まだ説明ができていません。
「パパはいつも、どこに帰っているの?」
両親が気まずい顔をしていると、すかさず上の娘が話を変えます。
「まぁ、いいじゃんそういうことは。そういえばさー」
小学4年生の子供に何を背負わせてしまっているのだろう。上田さんは、黙って子供を抱きしめます。
「辛い」
声に出せるはずがないことは、誰より自分が知っています。