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主夫の暮らす 時事放談

NHK「イケメン」堀潤アナが世に問う「反原発映画」

投稿日:2013年3月19日 更新日:


NHK「イケメン」堀潤アナが世に問う
「反原発映画」

 

2月28日、アメリカ・UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の視聴覚室で、ある自主制作ドキュメンタリー映画の上映会が開催された。
集まった数十名の観客は監督・堀潤氏(35)の説明に聞き入っていた。
「テレビではやれないことをやりたかった」
 上映会でそう語った堀氏は、端正な顔立ちで〝NHKきってのイケメンアナ〟として知られた存在。
’77年に兵庫県に生まれ、神奈川県立横浜平沼高校立教大学文学部ドイツ文学科を卒業後、’01年にNHKに入局した。
ニュースウオッチ9』のリポーター時代には、報道局が特ダネに対して贈る賞を4年連続で5回も受賞。
’10年には32歳の若さで『Bizスポ』の総合司会に抜擢された。
女性人気だけでなくアナウンス技術も高く評価され、NHK次代のエースと目されていた。
そのままいけば、間違いなく『ニュース7』キャスターなど、NHKアナウンサーとしての〝王道〟を歩んだだろう。
転機となったのは、’11年の東日本大震災だった。
原発事故後、反原発発言や、NHKの〝誤報道〟への謝罪や批判をtwitterで発信し続けたのだ。
福島県で除染作業に携わっていた60代の男性が亡くなった。
男性の死亡原因について国は「除染作業と関係はない」としているが何故関係がないと判断したのか、その根拠も示さなくてはいけない。
チェルノブイリ事故でさえ人体への影響について研究が続けられている最中だというのに。
情報公開の徹底を!〉(’11年12月12日)

〈国や組織に期待してはだめだ。
もうだめだ。
僕らで動こう。
僕らで考えよう。
僕らでこの国を変えよう。
だって、僕らの国なんだからさ〉(’11年12月12日)

堀氏の踏み込んだ発言は局内で問題視され、徐々に立場を失っていく。
出世街道を捨ててまで、彼を突き動かしたものはなんだったのか。
原発の取材をする中、交友するようになった堀氏が、ある時、こう話してくれた。
「ちょうど震災の2週間前、福島の農家の人たちを取材したんです。
地銀と協力してブランド力のあるアスパラガスや養殖のマスを売り出そうという取り組みをされていたのですが、事故が起き、農家の方々の生活は完全に破壊されてしまった。
それだけ影響力の大きい原発の安全対策があまりに杜撰なことに憤りを覚えたのがきっかけです。
局内で僕は〝テロリスト〟のような扱いで、上層部の部屋に何度も呼び出されました。
ですが、その度に、耳を塞ぐように聞いていましたね(笑)」

 局内で行き場を失ってしまった堀氏は、『Bizスポ』の終了に伴い、昨年3月から、UCLAに留学した。
客員研究員としてデジタルメディアの研究をする傍らで、日米各地で原発の取材をし、ドキュメンタリー映画『変身』の制作に打ち込んできた。
その作品の上映会が開催されたのだ。
『変身』は、福島、ペンシルベニア州のスリーマイル、ロサンゼルス郊外のサンタスザーナのメルトダウン事故を追った作品。
被災者や原発作業員の内部告発などから構成され、徹底した反原発の視点から語られている。
堀氏は上映会でこう力説した。
「事故が起きた、忘れた、の繰り返しではなく、将来、世界のどこかで起きるかもしれない事故に備え、過去の事故の経験や知識を共有しなくてはならないという思いから、この映画を作りました」

復帰先は「きょうの料理

 堀氏は〝テレビではやれないこと〟へのジレンマを抱えてきたのだろう。
テレビ番組の数分の短いニュースは結論まで決まった台本が先にあり、それに合う映像を撮ってこなくてはならない。
そのため、〝大本営〟発表に偏りがちになり、市民一人一人が抱えている不安や思いはこぼれ落ちてしまうことが多い。
情報が多くの人たちと共有され、知恵が結集されることで、そこからいい解決法が生まれて来ると堀氏は考える。
今回の映画でも、市民の提案や映像を4割も取り入れたという。
「テレビは、社の価値基準で判断した一つの最終完成形しか公開しません。
しかし、〝テレビの取材はまだここまでしか到達していない〟ということが分かれば、専門家や市民が新たな角度やデータを提案して、別の到達地点を探すことができる。
テレビは多様な見解や提案を受け付け、それらを研究するシンクタンク的存在になるべきだと思います」

 4月から、堀氏はNHKに復帰し、日本に戻ってくる。
しかし、報道番組ではなく、『きょうの料理』の司会者としてだ。
 二度と政治的な発言をしないようにと用意されたポストだろう。
「1年後はどうなっているか。
フリーになっているかもしれない」と笑うが、仮にそうなったとしても、政治的な発言を繰り返す彼を起用しようとするメディアは多くはないだろう。
だが、本人はこう語る。「これまで、上を恐れずに発言してきたつもりです。
そして、これからもおかしなことがあれば意見して変えていきたい」

 アナウンサーとしては、茨の道が待っているかもしれない。
しかし、〝王道人生〟を捨てたイケメンアナは、自分の信念に忠実であり続ける。

「フライデー」2013年3月22日号より

-主夫の暮らす, 時事放談

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