リスク管理を考えるうえで、マネーマネジメント、資金管理についても考えないわけにはいきません。初心者ほど顧みることがなく、優秀なトレーダーほど重視しているポイントがマネーマネジメントなのです。では、マネーマネジメントはどう考えればよいのでしょうか。それはひと言で済んでしまいます。「元本に対する損失の割合を常に一定のパーセント以下にとどめる」ということです。
CFDやFXのようなレバレッジを利かせることができる投資商品に対して、「レバレッジ管理はどうすればよいのか?」といった質間を頻繁に耳にします。しかし、そうした質問は意味をなしません。レバレッジが2倍であろうと、100倍であろうと、取引の結果、生じうる損失が資金に対してどのくらいの比率なのかということを考えるだけでよいのです。
抽象的な言葉ではわかりにくいので、もっと具体的にマネーマネジメントの要諦を指摘しておきましょう。「1回のトレードで許容できる損失は、最大でも資金の5%まで」です。
元手100万円でCFDに挑んでいるのなら、1回のトレードでの損失は5万円までに抑えよということです。先ほど、損失を挽回するのにどのくらいのリターンが必要となるのか計算してみました。5%の場合だと、もとの資金を回復するのに5・3%程度のリターンで済みます。簡単だとは言いませんが、可能な水準です。もしこれが10%であれば、もとの資金に復するのに11%のリターンが必要となってしまうので、1回の負けが大きく後に響いてくることになります。5%というのは、失敗しても取り返しのつくぎりぎりの水準だといえます。
こうした思考のプロセスはプロのファンドマネジャーも取り入れていますが、彼らの場合は資金の1%や2%といった、より厳しいルールを設けている場合が多いようです。それだけリスク管理を徹底しているということでもありますが、 一方で彼らは資金規模が大きいため、それだけ厳しくしても利益があげられるという側面もあります。
100万円の資金でCFDに取り組む投資家が、「1回のトレードで許容できる損失は、最大でも資金の1%まで」とルールを決めたとしましょう。1トレードで1万円の損失しか許容できないため、ちょっとした価格変動ですぐに損切りせざるを得なくなります。また、中長期的な大きな値動きを捉えようとすると、目先の価格変動によって含み損が発生することも多々ありますが、そうしたときにやはり損切りを余儀なくされてしまいます。
こうしたことを考えると、資金の小さな個人投資家であれば、5%程度が妥当なのではないでしょうかoもちろん5%は「最大でも」という注釈つきですから、取引期間の短いデイトレーダーはもっと小さくしたほうがよいでしょうし、中期的なスイングトレードであっても、相場次第では3%、4%と柔軟に対応するに越したことはありません。
CFDではソニー株やゴールドマンサックス株など株式CFDのトレードを1株単位から行なうことが可能です。銘柄ごとに定められた証拠金率によって、元手に対してどれぐらいのレバレッジを効かせることができるかは異なりますが、最大で20倍(証拠金率5%)ですから、ソニー株がこれに該当するとすれば、1株2000円のときに10万円の元手があれば、手数料を勘案せずに計算すると1000株をトレードすることができることになります。ただ、それではわずかな値動きでマージンコールがかかり、強制決済されてしまうリスクも非常に高いですから現実的ではありません。
かといって、1株しかトレードしなければ、思惑が的中して2000円だった株価が25%値上がりして2500円になったとしても利益は500円にしかなりません。これではあまりうま味がありません。1~1000株のあいだのどのくらいが適正な水準なのか、初心者の方は迷うところでしょう。
ここで先ほどの「1回のトレードで許容できる損失は、最大でも資金の5%まで」というルールを思い出してください。10万円の資金でトレードするなら、最大でも5000円までの損失に抑えるということになりますoこのときチャートから見て、1800円あたりに損切りのポイントがあったとすれば、1株当たりの損失が200円で、最大損失許容額が5000円だとすれば、25株まで買っても大丈夫だと答えが出てきます。
一方、利食いはどうなるでしょうか。先ほど書いたように損失と収益の比率が1~2程度となることを目安にしているなら、買値よりも200円×2倍=400円上の、2400円程度を利食いの目標価格とすることになります。もし利食いで判断に迷う局面があれば、25株のうち10株は少し早めに利益を確定して、15株は目標である2400円まで我慢するといったこともできます。
このように「最大の損失は資金の5%まで」とルールを決めて、それにもとづいた損切りや利益確定のポイントをチャートで見定めていくと、そこから逆算して自ずと
レバレソジは決まってきますo「レバレッジは何倍が適正ですかっ」という質問が無意味であることがおわかりいただけるでしょう。
したがって、CFDトレードにおいて、「自分は5倍のレバレッジでトレードしよう」といったルールを決めるのは無意味なことでしかありません。レバレッジは投資家それぞれの資金量、考え方と相場の状況によって自ずと決まってくるものだからです。 そうしたさまざまな条件を勘案した結果としてとったポジションのレバレッジが高まってしまったとしても、リスク管理のルールを徹底しているならば、「ハイレバレッジ=ハイリスク」という月並みな文旬もまた無意味であることがおわかりいただけるでしょう。