損切りについて書いたので、次は利食いについて検討してみましょう。利食いについて悩むということは、エントリーが成功したということになりますから、ある意味では賛沢な悩みともいえます。しかし、利食いはプロにとっても非常にむずかしいポイントです。
利食いの失敗とは何でしょうか。ひとつは利益を欲ばりすぎて、利食いどきを逃してしまうということがあります。人間は欲深い動物ですから、トレードがうまくいつて10万円の利益が出ると「次は20万円の利益を出そうー」などと、つい欲ばってしまいます。その結果、利益どころか、利食いのタイミングを完全に逸して、いつの間にか損切りを余儀なくされてしまうというケースがあります。
しかし、人間とはおかしなもので、損切りは騰踏するくせに、利食いでは迷わずさつさと利益を確定してしまう人が多いようです。いわゆる「損大利小」です。
もうひとつ、利食いの失敗で考えられるのが、「早すぎる利食い」です。私はこれを「プロの失敗」と呼んでいます。プロであれば、損切りができるか否かというハードルは軽く越えているでしょう。しかし、利食いについてはプロであっても失敗することがあります。これは初心者を脱したトレーダーがぶつかる壁でもあります。損切りであれば、早すぎるに越したことはありません。しかし、利食いは違います。早すぎる利食いでは、もっと利益が伸ばせていたはずなのに、利食ってしまい、微々たる利益に甘んじてしまうことになります。損切りを躍踏なく断行できる人のみがCFDという利便性に長けた金融商品をトレードする資格があるのです。損切りの甘さをアマチュアの失敗と私が呼ぶのはそのためです。損切りを断行できる実行力は、トレードに参加するための最低条件なのです。CFDというレバレッジ商品では、リスク管理が最大のポイントになりますから、トレードする際には必ず損切りするよう心がけてください。損切りなきCFDトレードはギャンブルでしかありません。
しかし、プロでさえ失敗するのですから、利食いがむずかしいこともまた事実です。「ここが天井で、いまを逃すともう利食いどきはないのではないか」という恐怖心が、失敗の元となります。失敗を避けるには、恐怖心に打ち勝ち、エントリーした当初に描いたシナリオが達成されるまで、忍耐強く待たなければならないのです。言葉で言うのは簡単ですが、早すぎる利食いという失敗を避けるのは、たしかにむずかしいものがあります。「ここが本当に相場の天井・大底なのか」、初心者の方であれば判断に迷うのは当然です。そんなときは偶数でポジションを建てて、迷ったときは半分を利食いして、もう半分は利を伸ばすことに集中するといった方法があります。また、建値の違う複数ポジションを持っている場合は、より有利なポジションでは
なく、含み益の小さいポジションから決済していくのが、メンタル面を好転させる秘訣となります。
皆さんが自分の取引画面を開いたとき、含み損があったり、収益が措抗しているようだと、精神的に落ち着かないのではないでしょうか。ほんの少しの相場の上げ下げで含み益に転じたり含み損に陥ったりするようでは、 一」早二憂して落ち着いて次のトレード対象を探すことができませんし、利食いのタイミングをはかるにも気が焦ってしまうはずです。皆さんが仕事や家庭の問題で重要な決断を迫られたとき、どうやって考えるでしょうか。明日までに提出しないといけない資料の作成に追われた状態で正常な判断をくだせますか? 借金の取り立てに追われているさなかに、子どもの進路問題のことを考えられるでしょうかっ 何らかの課題に直面して決断を下すときは、落ち着ける環境でゆっくりと選択肢を検討するでしょう。別のことに頭をとられながら、焦りながら決断を下すことはないはずです。
トレードにおいても焦りや不安は禁物です。健康な精神状態にあってこそ、正しい判断が下せるのですoそうであれば、建値の異なる複数のポジションを持ったとき、 ゆつくり落ち着いて後の相場が見られるよう、より有利なポジションを残す、という選択肢が有効であると、おわかりいただけるのではないでしょうか。