CFDは証拠金取引ですから、少額の証拠金を元に大きな金額のトレードを行なうことができます。こうしたトレードを「レバレッジを効かせる」といいます。レバレッジが何倍かというのは、元手に対してどれだけの金額のトレードをしているかというところから逆算して求められますが、その適正値は投資家それぞれの資金量や考え方次第です。最初から「何倍のレバレッジがいい」といったものではありませんし、そもそもレバレッジを効かせなければいけないというものでもありません。
証拠金として100万円を納めて、2000円のソニー株を100株、20万円分だけ取引したって一向にかまわないのです。レバレッジを効かせたトレードを行なえば、元手に対する損益の変動割合が大きくなるため、資金効率を高めることはできますが、大きなリターンを狙うことができる反面、リスクも同じだけ高まることに注意が必要です。
入金していて、株価が2000円のときにソニー株を100株買うと、取引に必要な証拠金がロ座の「投資可能余力」から差し引かれます。ソニー株100株分の購入に必要な証拠金が2万円だとすれば、今後、取引に使える金額は48万円になります。このソニー株cFDを2500円のときに売ったとしましょう。必要証拠金としてロックアップされていた2万円は解除され、利益として500円×100株廿5万円がロ座に反映されることになります。一方、現物取引では最初に株を買うに際して20万円が必要となり、保有中は他の取引に当てることもできませんから、取引に使えるのは残りの30万円ということになります(手数料等は考慮せず)。 結果的に5万円の利益となるのは同じであっても、証拠金取引の場合は必要な資金がより少額で済み、余った資金を他の取引に向けることができるため、資金を効率よく回すことができるのです。これが証拠金取引の大きな魅力です。
下がり率にすると5%です。ところが、為替市場ではどうでしょうか。5%の変動といえば、100円だった米ドル/円が95円になるということです。1日で5円も為替が動けば、新聞の一面を飾るほどの大ニュースとなるでしょう。 為替市場の値動きは、変動率にすれば大したことがないということです。変動率が1%や2%程度の凪のような市場では、トレーダーは面白みを感じないでしょう。彼らは「儲けたい」「お金を増やしたい」から、わざわざ貴重な時間を投資に費やしているのです。そこで考えられたのがレバレッジです。値動きが1%しかなくても、100倍のレバレッジをかければ、100%の値動きがあるのと同じことになるというわけです。
つまり、レバレッジの意義とは本来、「値動きの小さな市場で効率よく稼ぐため」なのです。それなのに、為替に比べればはるかに「値動きの大きな市場」である株式市場で、FXと同じ感覚を持ってレバレッジを取り扱えば、F1用のマシーンで住宅街の狭い路地を駆け抜けるようなものです。少しアクセルを踏み込んだだけで大惨事は免れないでしょう。
結局、レバレッジを効かせることができるというのは、投資家の自由度や利便性を高めるしくみであって、その活かし方はそれぞれの投資家次第だということです。さて、CFDの場合、そのレバレッジの自由度はどれぐらいあるのでしょうか。
業者によってレバレッジは異なりますが、最大でも20倍程度となります。一昔前のFXの経験がある方なら「物足りない」と感じるかもしれませんね。海外のFXでは100倍200倍といった高倍率なレバレッジを売りにする取引会社も増えてきています。そうしたFlカーのようなエンジンに慣れてしまった人から見れば、20倍程度のレバレッジは原付バイクくらいにしか感じられないかもしれません 。しかし、CFDとFXでは、取引する対象が異なることを忘れてはなりません。FXのトレード対象は通貨です。そして、為替市場の値動きというのは、個別株や株価指数、コモディティなどに比べて非常に小さいのです。
たとえば、市場のオープン時に1000円だったA社の株が午後には950円になっていたというようなことは、株式市場ならば珍しいことではありません。これを試しに、ソフトバンク株でシミュレーションしてみましょう。 ソフトバンク株を726円で1000株買ったとします。このとき、元手は20万円です。証拠金20万円としてレバレッジを計算すると、72万6000円の取引を行なっているので、3・63倍です。 その6営業日後には、早くも1313円まで値上がりしました。このとき、スプレッドを考慮せずに計算すると、1株当たりの利益が1313-726=587円ですから、購入した1000株分の利益は58万7000円になります。たったの3日間で元手20万円が4倍近くになるのですから、レバレッジの威力恐るべしです。
ところが、この人はここで調子に乗って、さらに翌日に1万株を購入しました。1130円で1万株ですから1130万円の取引になります。最初の元本20万円にさきほどの取引の利益58万7000円が加わったとはいえ、レバレッジを計算すると14.36倍にもなります。当初は思惑どおりに株価が上昇し、ほくそ笑んでいられましたが、利食いをせずに欲張っているうちに株価は反転。買値の1130円を割りこんでしまい、あっという間に証拠金が底をついてしまいました。株価は買値よりも80円ほど下がっただけです。1130円に対して80円の下落は、率にして7%ほどに過ぎません。しかし、レバレッジが約14倍もかかっていたため、7%の値動きが実質的には14倍の値動き廿約98%の値動きとなり、資産をほぼ全滅させてしまったのです。
FXの取引であれば、14倍程度のレバレッジは普通に使いこなしている人もいるでしょう。しかしそれは、繰り返しになりますが、為替市場では7%の値動きが「たった」とはいえないためです。FXの経験がある方はとくに気をつけてほしいのですが、CFDとFXのレバレッジを同じ感覚で取り扱うと、必ず思わぬ痛い目にあいます。投資対象の値動きをよく研究して、くれぐれも慎重にトレードしてください。