私の書棚のほとんどを占めているのが投資関連の書籍です。本棚を見ると、たいていはこう言われます。「そんなに必要ないだろうから、捨てればよいのに」と。他人から見ればそうなのでしょうが、「言うは易く行なうは難し」とはこのことで、どの本も私にとっては愛着があり捨てられないままに今日に至っています。私にとって投資関連の情報をインプットすることは楽しみでもあります。
もともとの傾向として、過度のファンダメンタルズ依存がありました。ファンダメンタルズ分析は大切ではありますが、それだけでトレードに勝てるというものではありません。そのことに気がつき始めたのか、最近ではテクニカル分析、それもシステムトレードについての書籍が増えてきています。システムトレードという響きの中に「楽して簡単に儲けられる」というイメージがあるのでしょうか。
システムトレードのほとんどはテクニカル分析に基づいていますから、過度のファンダメンタルズ依存から比べれば状況はマシになったのかもしれませんoそれでも、雨後の笥のように乱造されるシステムトレード本のなかには、首をかしげたくなるものも少なくありません。
システムトレードはふたつに大別できます。多額のコストをかけてシステムを用意して膨大なデータを解析しながら行なうアルゴリズムトレードと、テクニカル分析にのっとってシンプルなルールに従う単純なシステムトレードです。
多くの方が利用しているのは後者のほうでしょうが、ルールがシンプルであっても、パラメータ(移動平均線の期間を何日にするか、売られすぎ・買われすぎなどを判断するRSIの算出期間をどう設定するかなど、テクニカル分析に必要な数値のこと)の設定など、むずかしい点があります。パラメータをマーケット環境にあわせて最適化しすぎると、 一定の期間、 一定のマーケットに対して過度の最適化廿オーバーフィッティングとなり、そこから少しでもはずれると通用しない廿長く使えるルールとはならない、といったことに陥ってしまったりします。
システムトレードのそれぞれの手法の性格は、勝率と損益率のバランスで決まりますが、古今東西、「ほとんど負けないし、勝つときはすごく儲かる」といったような錬金術はありません。勝率を高くすれば損益率は低くなり、損益率を高くすれば勝率は低くなるのが必然です。また、逆張り型であれば仕掛けや利食い、損切りのタイミングを過去の値動きにフィットさせやすいために検証結果がよくなりがちで、順張り型や完全ドテン型であれば検証結果をカサ上げしにくい分、将来的な信頼性がある、といったこともあります。
したがって通常は、「損小利大で勝率は抑え気味」といった手法が用いられることが多くなりますが、そうしたシステムでは、世界でどんなに優れたものであっても勝率はせいぜい5割程度でしょう。私たちが日ごろ目にするようなものであれば、同じ損益率で勝率は4割程度が関の山ではないでしょうか。したがって、システムトレードをしていても、3連敗、4連敗することは日常茶飯事です。しかし、多くの人は、数回負けが続くと、トレードを続けることをあきらめてしまったりします。
結局のところ、絶えざるルールの改良やパラメータの見直しが必要となり、自らの判断=裁量に頼らざるを得ないのです。つまり、システムトレードだから「楽して簡単に儲けられる」なんてことは決してありません。私はシステムトレード自体を否定するものではありませんが、システムトレードで勝とうとするのには、裁量で勝てるだけの努力や技量が必要だということです。