カジノ資本主義が発展すれば、市場が不透明になるのも当然です。こうなると皆さんの興味は次の2つに絞られてくるのではないでしょうか。
①カジノ資本主義は今後も続くのか
②カジノ資本主義の時代に投資で勝つにはどうしたらよいのか
最初の論点については、「当面は続くだろうが、確かなことはわかりません」と言うしかありません。金融のプロを自称する人たちは、賢しげにあれこれと論議していますが、議論は錯綜しています。そうであれば、不確かなことを考える予測に時間をかけるより、市場の動向にあわせてク対応4していくことのほうが賢明です。
となると、次の論点がやはり大切だということになります。当面は続くであろうカジノ資本主義にどうク対応4して稼いでいくのか、ということです。日本で「貯蓄から投資へ」と言われ始めてから、投資の正しい方法論として頻繁に提唱されているのが長期国際分散投資です。これは「値動きの異なる傾向がある
多様なアセットクラスへ分散投資して長期保有することで、長期的には安定してリターンが得られる」とする方法です。
ところが、今回の金融危機では、株や債券、REIT(不動産投資信託)、コモディティなどさまざまな金融市場が一斉に暴落しました。分散投資の手軽な手段として、 バランス型ファンドというものがありますが、あるバランス型ファンドでは2007年3月からの1年半で約30%も基準価額が下落しています。1万円購入していたら、1年半で6818円になっていたというのです。
分散投資の特徴は良くも悪くもポートフォリオ全体の値動きが小さいという点だとされていました。分散投資を薦める人たちは「大きく勝つことは少ない代わりに大きく負けることもない」と、したり顔で発言していたはずです。実際に彼らが検証した過去のデータではそうだったのでしょう。ところが、2008年の
ような「100年に一度」とも評される事態のもとにあっては、過去のデータなど役に立たなかったのです。
ちなみに、彼らの提示する過去のデータからすると、分散投資では平均的に年5%程度のリターンが得られるとされています。ところが、先ほど書いたように
2007年3月末に始めた人は、約30%も資産を目減りさせてしまっているのです。これを取り返すには何年かかると思いますか?
「年5%のリターンが得られるとすれば、30%を挽回したいのだから、6年だろう」と計算される方が多いと思います。しかし、それは間違いです。
100万円あった資産はすでに70万円まで減ってしまっています。最初の1年で得られるリターンは70万円に対する5%ですから、3・5万円でしかありません。
元の100万円に復するには、7年以上の年月が必要となります。お気の毒というしかありません。
長期分散投資には、複利効果というメリットもあると説明されますが、複利効果がプラスに働くのは「大きな負けをしなければ」という条件つきです。2008年という年は分散投資家にとって不運な年だったのか、あるいは分散投資そのものの有効性が失われた年だったのか、その結論を出すのには、まだ早急かもし
れません。しかし、私たち個人投資家にとって「これから分散投資を始めよう」という気にはなりづらいというのが、皆さんの本音ではないでしょうか。